12/20

冬になるとどうも体調が思わしくない日が増える。

いやまぁ、夏もそうなんだけれども。

野菜不足が原因だろうか。

さて続き。

 

価格が、賃金上昇の影響を受けて上昇する場合を考えよう。

 

まずは完全競争(「資本主義の現段階にとっても過去の数世紀のいわゆる競争資本主義経済にとってもまた、これがきわえて非現実的な仮定である」なんていってるんだけどね)。

右上がりの供給曲線を仮定する。供給曲線は貨幣賃金率と限界生産物の比率だから、それぞれの産出水準に対応して、賃金率上昇と同じ比率でシフトする。

第一部門・第二部門では、今期の雇用量及び産出量は前期の資本家の意思決定によって決定しているので変化せず、価格が賃金率の上昇と同じ割合で上昇する。結果、「第Ⅰ部門と第Ⅱ部門の利潤は賃金と同一の割合で、つまり1+α倍上昇する」ことになる。

第3部門はどうなるだろうか。前回の(5)式Π3=W1+W2からわかるように、第3部門の利潤も、賃金と同一割合で上昇する(生産量、消費量の増減がなければ、當間氏の言葉を借りれば、「賃金財単位で測った他部門からの賃金財需要が変化しないならば、同部門の雇用と産出量を増減させる誘因が生じない」ということになる)。

カレツキを引用して結論としておく。

「完全競争のもとでは、3部門すべての生産量は以前と変わりなく、一方その価値額は各々1+α倍増加する。かくして賃金支払額と総利潤は同じ割合で増加し、したがって国民所得の分配は、不変のままにとどまるのである。」

 

寡占のばあい

単位あたり主要費用にマークアップして価格設定すると仮定。

カレツキ先生によれば、マークアップは「労働組合活動に左右」される。「労働組合の力はマーク・アップを制限」し、その組合の力は「要求されまた獲得された賃金上昇の大きさに表れる」ことになる。

 

「著しい賃金上昇のためにマーク・アップがいくぶん押し下げられ、そのため利潤から賃金への国民所得の再配分が起こる」場合をかんがえてみる。

まず第1部門と第2部門

第1部門&第2部門の雇用&産出量は所与。このとき、二つの部門の価格は当然上昇するが、上昇率はマークアップが低下するために、ちんぎん率の上昇率よりも低くなる。そのため、次のような不等式が成立するんだそうだ。

利潤の上昇率<所得の上昇率<おちんぎんの上昇率

第3部門に関しても、上の不等式は成立しちゃう。(5)式から、第3部門の利潤はW1+W2と同額になる(=賃金率と同じ比率で上昇)けれども、マークアップが低下しているので、利潤から賃金への再配分が生じる。結果、「賃金支払額は賃金率の上昇以上に増加する」こととなる。

このことは、第3部門での「雇用と産出量は増加する」ということを意味する(第1第2部門は変わらない)。

 

このことを、式で確認する。面倒なので、参考文献にある當間氏のを使わせてもらう。

f:id:ysi0415-yamagata:20141220033702p:plain

p3:第3部門の価格 Q3:第3部門生産額 w:貨幣賃金率 Li:雇用量(i=1,2,3)

f3:第3部門マークアップ

(2-1表は前回の参照)

2-10式から、f3が低下し、第3部門の利潤、賃金率が同一比率で増加すれば、L3が増えることがわかる。

 労働組合の力が弱まる=マークアップが上昇する場合、「前述の過程は逆になる」。すなわち、「第Ⅰおよび第Ⅱ部門の雇用と産出量は以前のままであろうが、第Ⅲ部門のそれは減少する」ことになる。

※この利潤から賃金への再配分、「過剰能力が存在しているときにのみ実現可能」となる。過剰能力がない(=資源の完全利用状態)場合、需要によって価格が決定されるため。

 

いままで論じてきた事は、賃金が上昇すると失業が生み出されるんじゃ!という「古典派経済学の教え」への反論が目的だったわけだが、カレツキはこう結論づける。

労働組合の力の増大を表わす賃金上昇はー古典派経済学の教えとは反対にー雇用の増加をもたらす、ということになる。逆に、組合交渉力の弱化を表わす賃金低下は雇用の減少をもたらすことになる。賃金削減を認めてしまうことに表われる不況時の組合の脆弱性は、失業を緩和するどころか、むしろその深刻化の1因となるのである。」

 

 参考文献は前回と同じ。

(ミクロの教科書もみたんだけど、なんだったか忘れてしまった・・・)

12月18日

ついったのたいむらいんを見ておったら、カレツキの『階級闘争国民所得の分配』の内容を思い出したので

 

 

仮定と前提

いち:投資財生産部門(第1部門)、しほん家消費財生産部門(第2部門)、賃金財生産部門(第3部門)から構成

に :政府部門、外国部門は存在しない

さん:ろうどうしゃは、貯蓄しない

よん:しほんかの消費、投資は過去の意思決定により決定、つまり今期の投資と消費は所与

 

f:id:ysi0415-yamagata:20141218002850p:plain

部門の産出量の価値 Yi 各部門利潤Πi 各部門の賃金Wi (i=1,2,3)

Yは粗国民所得、Πは総利潤、Wは総賃金

 

部門の産出量の価値は

第1部門(投資財生産部門

Y1=Π1+W1  (1)

第2部門(しほんかしょうひざいせいさんぶもん)

Y2=Π2+W2   (2)

第3部門(賃金財生産部門)
Y3=Π3+W3   (3)

となります。

第3部門の産出量の価値は、労働者は貯蓄しないという仮定の下では、労働者の支出額に等しいので

Y3=W1+W2+W3 (4)  が成立する。

(3)と(4)から、

Π3=W1+W2 (5)

第三部門の利潤は、他の部門の労働者の需要額に等しい。

ここで、第1部門、第2部門の産出量の価値を合計してみると、

Y1+Y2=Π1+Π2+W1+W2

(5)式<Π3=W1+W2>を考慮すると、

Y1+Y2=Π1+Π2+Π3

Y1+Y2=Π (6)

この式は、経済全体の利潤額が、第1部門、第2部門の産出量の価値に等しいことを意味する。(P=I+C のが有名だろうか)

そして、利潤は、過去の資本家の投資と消費に関わる意思決定により決定されるということも意味する。(第1部門と第2部門の雇用量、産出量も過去の意思決定で決定)

「投資量と資本家の消費は考察される短期期間に先立ってなされた決意によって決まって」いるというわけ

カレツキは、うえのような議論を踏まえ、「賃金率が上昇する場合には、賃金財への支出増と投資および資本家消費への支出減に伴った、資本設備の再構成という点が、いっそう高価になった労働に資本が代替される結果として失業が一段と高くなる」みたいなのに、反論していく。

 

まずは、全部門で賃金が⊿Wだけ増加したとしよう。各部門の価格は変化しないと仮定。賃金の上昇する割合をαで表すと、第1部門と第2部門の合計した賃金の増加分は α(W1+W2)となる。価格が不変なので、この二つの部門の利潤は、減少することになる。

他方で、第3部門はα(W1+W2)分だけ利潤が増加することになる(産出量が増加)。結果、第1部門、第2部門の利潤の減少は、第3部門の利潤の増加によって相殺されるので、総利潤は以前と変わらない。したがって「利潤から賃金への絶対的シフトはまったく生じ」ないことになる。

 

今までは価格が変わらない、と仮定してきたが、カレツキは「事実であるとは思われ」ず、「価格は賃金上昇の影響を受けてむしろ上昇するだろう」という(価格が変わらないという仮定は、「賃金上昇の分だけ利潤から賃金へのシフトがあるとする理論に沿うもの」で、上記の結論(総利潤不変)は、「この理論に対する帰謬法となっていた」そうで)。

価格が上昇した場合はどうなるのか。カレツキは、完全競争市場、寡占市場それぞれについて論じていくわけであるが、今日は疲れたのでこのあたりでやめる。

 

さんこーぶんけん

當間清光『カレツキの分配理論(2)』

根井雅弘『現代経済学講義』